2003.6.10:NARUTO First Novel




ももいろきのこ





それは、ありふれたドラマのワンシーンから始まった。



若い男女がじっと熱い眼差しで見つめ合っていたかと思えば、徐々に近づき、重なり合う唇。
そのまま女はベッドに押し倒され、服を脱がされて。
抱き合い、絡み合い。
自然と二人の呼吸は荒くなってゆき、苦しそうな呻き声を上げる男と、狂ったように何とも言えない声で鳴く女。

そんな所謂“ベッドシーン”を、サスケは心底不思議そうに見入っていた。
特に、身体への生理的な変化も、この若さをもって起こらないらしい。
作ってやったカルピスをストローで啜りながら、そんなシーンを真剣に見つめている教え子に、カカシは小さい溜息を吐く。


一回り以上も歳の離れた子どもを食いたいなどと自分が思うなどと夢にも思わなかったが、このガキのくせに無駄に漂う色気に当てられ早数ヶ月。
なんとか、暇な時など自宅に遊びに来るくらいにまで懐いてくれた。
彼の存在・外見的にも既に経験者だろうと踏んでいたのだがまったくの素人で。
カカシの『自宅に来たらOKと』いう勝手な仮説は初日に覆されたのだった。

けれど、我慢はすでに臨界点だ。
今まで気に入った相手はほぼ即日食いだったこの上忍にとっては、まさに地獄。
そろそろイイだろうと。
性的欲求を無理やりにでも目覚めさせてやろうと、ドラマ化されたイチャパラをさり気なく見せてみたのだが…。



「そのTVおもしろい?」
せめてもの救いでブラウン管に釘付けになってくれているのだから、とりあえず聞いてみるのは有りだろう。
「仲のいいやつらだな」
さっぱりわからねえが、という部分は伏せておいた。
「サスケもしたくない?ああいうこと」
「?!」
いつの間にか、覆いかぶさるように自分の上に乗っているカカシを、目を見開いて見上げている。
「ねえ」
忍者のくせに本当に不意を突かれたのだろう、口まで大きく開いてしまっていて。
可愛い。
舐めたい。
喰いたい。
………。

とうとう限界を超え、いつものポーカーフェイス張りの笑顔が引きつったようだ。
サスケの眉根が少しだけ訝しげに寄せられる。
「って、聞いてんだよ!」
「っ?!何でアンタ怒ってんだ?!」
彼にしてみればもっともなことを言われ、双方に暫しの沈黙が流れた。

「いい加減、離れろよ」
あまり人との接触に慣れていない者にとっては、この状況は不快かもしれない。
任務や修行中のどさくさで、嫌がられない程度にライトタッチで触ってきたお陰か、突き飛ばされるまでの拒絶は受けなかったが。

「いや。だって、俺たちだって仲イイでしょ?」
焦っては全てが水の泡…、と。
何度も何度も心の中で落ち着け、と自分を宥める。
「俺はしたいんだけどなあ、サスケとああいうこと」
「あれを、か…?」

画面に戻したサスケの目に映るのは、さきほどとほぼ同じ、ベッドの中で抱き合う男女の図。
裸、で。
これから、風呂にでも入るのだろうか。
本気で、そう思う。
「ね、ほら楽しそうだと思わない?」
確かに、二人とも嬉しそうに、むしろ幸せそうに笑い合っているのだ。
「だから、俺たちも…」
「うあっ!何すんだよ!!!」
そうっと、捲れた上着に手を滑り込ませて。
脇腹あたりを撫で上げてみたのだが…、過剰な反応を返してきたサスケに、不覚にも顔面を殴られてしまう。
「いって…」
「てめえ!いいかげんにしろよ!いつも、いつもいつもべたべた触ってきやがって!!!」
鼻を抑えて縮こまるカカシを怒鳴りつけるサスケはまるで、フーッ!と毛を逆立てて威嚇する黒猫みたいだ。


「ああ、そう。サスケは大人になりたくないのね」
「は?」
「今まで隠してきたけど、あれ大人になるための修行なのよ」
「!」
もうどうにでもなれと、半ば強姦する覚悟でこんなベタなことを言ってみたのだけれど。
『修行』という単語に変わった目の色を決して逃しはしない。
「あの、上に乗ってる男が師匠。下の女が弟子ってわけ」
今の俺とお前の状況と一緒vと、カカシは取り戻した余裕の微笑を顔に乗せて。

「修行…」
「せっかく俺が付き合ってやろうと思ってたのに…。お前にやる気がないんじゃなあ…」
「待て!」
のろのろと身体をどけようとするカカシの腕を、まだ子どもの小さい手がしっかりと掴む。
「あれをやると、強くなれるんだろうな」
「っていうか、ガキからオトナになれるんだから、この差って大きいと思うけど?」
「まさか…、ナルトやサクラは…」
こうくるだろうと思っていた。
カカシは、ニヤリと隠された黒いマスクの下でほくそ笑む。


「残念ながら、もうオトナだよ」










決して嘘はついていない。
子どもから大人への階段であることは事実だ。
ただ、気持ちの問題が、というだけであって。

「なんで全部脱がなきゃなんねえんだ…」
かなり恥ずかしいのか、サスケはシーツに包まって、うっすら涙目で睨みつけてくる。
その姿がどんなに男を欲情させるかなんて知りもしないで。
「風呂入るときだって脱ぐだろ?それと似たようなもんだ」
「わからねえ」
俺だってわからねえ、とカカシはにっこり笑ってマスクを人指し指で下げ、そのままサスケの唇に噛みついた。

「始めるか」
「あ、ああ」
たかが触れるだけのキスにもいちいち気を強張らせてくれて。
これぞ犯し甲斐があるといったところだろうか。

再度重ねられた唇は、すぐに離れることなく。
カカシの舌が身をくねらせながらサスケの鉄壁の門をこじ開け、誰もが不可侵であった口内へと進入していった。
「んっ!」
初めて体験する他人の舌のやわらかさや、口内を掻き回されていく感触に、サスケのぎゅっと閉じられた目尻には生理的な涙が溜まっていく。
そんな教え子の様子を楽しそうに薄目を開けて観察しながら、奥の方に引き篭っていた舌を絡めとリ、ゆっくり吸い上げていった。
「カ、カシ…、苦し…」
「大丈夫だから。俺にまかせてな」
首筋に添えていた手の平で、軽くサスケの張りのある頬を抓んでやる。
舌は絡み合わされたまま、何度か角度も変えながらやわらかい唇を味わっていくと、徐々に紅潮してくる頬に、肩でするようになる苦しげな荒い呼吸。
まずはこんなもんか、とゆっくり解放してやる。
途端、溢れ出してくる唾液に困惑しつつも、サスケはどちらのものともわからない液体を覚悟を決めて飲み込んだ。


「どうだった?気持ちよかったでしょ」
「なっ!」
「最後のほう、結構サスケからも絡んできてたし」
俺の目はごまかせないよ、とますます赤面していく鼻の頭にちゅっとキスを落とす。
しかし、やっぱり素質はあるようだ。
あまり怯えるようだったら今回は諦めるつもりで(いちおう)いたのだが、行為はこのまま進められそうである。

「何言ってんだてめえは!も、もう帰…」
「まあまあ、落ち着きなさいって」
ひょい、と抱き上げ、自分の膝の上に座らせて。
「大人になりたいんでしょうが」
耳の穴に舌をねじ込ませながら、そう囁く。
「アッ!」
「感じちゃった?」
「いちいち聞いてくんじゃ!って、どこ、触って…」
下腹部に伸ばされたカカシの指先はサスケのまだ幼いものに触れ、ビクンと身体が痙攣を起こした。
それを優しく、やんわりと手の平で包み込んでやる。
「や、め」
「なんで」
ゆっくりと上下に動かそうとするカカシの腕を掴んではいるが、緊張と怯えでまったく力が入らないようだ。
為すがままに扱かれていれば、サスケだって立派な男。
萎縮していたものは、小さいながらも立派な生殖器へと成長していった。
熱がそこに集まっていくのもわかるし、頭を擡げていく感覚も嫌というほどダイレクトに伝わってくる。

そんなあまりの恥辱に、サスケは見ていられないと俯いてしまって。
サラサラと落ちてくる髪の毛で表情は読み取れないが、また目に涙をいっぱい溜めているに違いない。
「サスケ、ちゃんと見てろよ」
足を閉じてしまわぬよう抑えていた左手を離し、その手で額を上げさせる。
「あ…」
「大丈夫だって、言ったろ?」
首筋に這わせた唇が、透けるような白さを誇る肌を吸い、そこに紅い染みを作った。
いつかサクラが、何故日光直下の任務を一日行っても日焼けしないのかと羨ましがってたっけ。
「あ、ああっ!」
チクリとした、でも不思議と甘い感覚に気が抜けた瞬間、カカシの巧みな指技と相まって、呆気なくサスケは白濁した液体をぶちまける結果となる。

「カカシ…俺…」
不安そうな、そして何故か申し訳なさそうな瞳で覗き込んでくる。
「どうした?」
「ッ?!」
「?」
ごく自然に、手の平で受け止めた精液を舐め取っていたのだが。
がばっ!とその腕を奪い取られる。

「カカシ、お前、今なに…」
「何よ」
サスケの腕ごと引き寄せ、残りの精液に舌を伸ばすカカシを頭突きで止めて。
「汚ねえだろ!やめろ!!!」
これ以上ない、というくらい真っ赤になって、サスケはカカシを睨みつける。
ほんのちょっと気を抜いたら涙が溢れ出てきそうな表情だ。
「汚いなんて思ってないよ」
「でも」
「ま…、ローション買ってないことだし…」
「え?」
聞こえなかった、と問うサスケは無視して、また彼の身体を抱き直す。
「うあ!」
どん!と背中を押され、両手を床に着いた格好は、言うまでもなくカカシの目の前に尻を突き出す格好となるのだ。
「ちょっ!」
「少し痛いかも知れんががんばれよ」
「馬鹿!何すんだ!!!」
精液をたっぷり滴らせた中指を、躊躇なくアナルへと一気に第2関節くらいまで挿入して。
腸壁の引き攣れるような痛みに、サスケは声も出せずにただ身を強張らせる。
「くっ…!」
「やっぱきついな」
「あたり前、だ…うあっ!あ…」
回転を加えながら、螺子のごとく奥へ奥へと指を進めていき、途中関節を折り曲げて柔軟な壁を広げていくのだ。

「痛い?」
「に、決まってんだ、ろ」
と、聞いたところで痛みを和らげてやる方法なんてこのまま愛撫を続け、呼び覚ました快楽に溺れさせてやるくらいしか思いつかないけれど…。
「もうすぐ楽になるよ」
本当かよ、とサスケは涙目で訴えてくる。
「たぶん、ね」
「ひっ!」
腰を両手で掴まれ、身体は半分中に浮いている状態となった。
がくんと頭が下がったお陰で見ることができた、天を向いてそびえ立つ、カカシのもの。
むしろ、見ないままでいたかったもの。

「コラ、逃げんなって」
「じょ、冗談じゃ!」
この嫌な予感は間違いないだろう。
奴はアレをケツに突っ込む気なのだ。
やっと、というか今更というか、サスケは持ち前の勘の良さを発揮して。
何とか逃げようともがくが、抑えられた腰はカカシに引き寄せられていくだけだ。

「俺を殺す気か!」
「別に死にはしないって」
「絶対、死ぬ」
んなデカイもん突っ込む気か!と叫んで、ハッと口をつむぐが時既に遅し。
「何だ〜、サスケくんもわかってんじゃない」
「やめ…」
「そんなにデカイ?俺の」
「ガキかてめえは!」
よくアカデミーでナルトやキバあたりが便所でやっていた。
生殖器を丸出しにして、どちらがデカイかを競って勝った方がまさにこの顔で喜んでいた懐かしくも阿呆らしい光景を思い出す。

「ま!要は膨張率の問題だからね。ちっこい時の大きさなんてそうは問題にならないワケよ」
「何の話だ!」
ほんとわけわからねえ。
この行為も。
この上忍も。

持ち上げられた身体はくるりと向きを変えられ、カカシと向かい合わせとなった。
「じゃ、入れるからリラックスしてろ」
鼻の頭と頭が擦れる距離でそう言いながら。
、カカシの先端がアナルに触れたところで、支えだった腕は解かれ。
ずしん、とその杭の上にサスケは落ちていく。
「い゛っ…!て、え…」
足掻こうにももう足に力は入らず、自らの体重だけが重力に忠実に重く圧しかかってきた。
中途半端に溶かされたアナルにずぶずぶとカカシのものが犯してくれば、耐え切れなくなった腸壁はピシピシと裂けて、接合部から洩れる白濁した液体に赤が混じり出す。
いつの間にか回していた指先が、カカシの広い背中に爪を立てていた。

「こんな、こ、と…。マジでナルトもやったのか、よ…」
いや、むしろサクラまで?!
「まあ、ね…」
ま、今は考えんなと、先ほど慣らせておいたキスを贈り。
何とか身体を楽にさせてやりたいのだが…。
「もうちょっと、身体の力抜けない?」
ちゅっちゅっと唇を啄ばみつつ、そう聞いてみる。
「無理に決まってんだろ!!!」
無茶な要求にサスケが怒鳴った瞬間、下腹部に走った激痛に悲痛な声を上げる。
叫んで身体の緊張が飛んでいったはずみで、ぐぶ、入りきれずにいた一番太い部分が、カカシのもの全てがサスケの中へと収まった。
「あ、今ので全部入ったよ。おめでと」
「めでたくなんか、ねえ…」
痛みに涙は溢れてくるし、アナルからの血は止まらないし、何もかもが最悪である。

小刻みに震えるサスケの下半身は、陰茎への愛撫をもってしても以前力が弱まらない。
当初萎えていたものの、触れればそれなりの反応を充分に返してきているから決して痛みばかりでないことは推測できるのだが…。
この強烈な締まりではこっちが今すぐにでもイッてしまいそうで。

最初だし、サスケのこともイかせてやればいいか…。
むしろ短い方が彼にとってはいいかもしれない。
「決定」
「え…?」
胡座をかいたままで、カカシは腰を突き上げてきた。
「いっ!てえ、な、おいっ!」
「これがセックスっていうやつなのよ」
「何て、ふあ、あ、ああっ!」
がくがくと揺さぶられ、カカシのものは半分くらい出てはまた勢いをつけて突っ込んでくる。

「カカ、シ…っ!」

何度も何度もそうされていたらもうなんだかよくわからなくなってきて。
痛みは消えていて、気づかぬうちに縋りつくように抱きしめて、カカシの名を呼んでいた。

「可愛いよ、サスケ」



先端を親指の腹で擦られたサスケのものからは甘い嬌声とともに白濁した液体が溢れ出し、二人の腹を汚す。
一息置いてカカシのものからもサスケの体内へと熱い液体が飛び出していた。
「…アンタの、あったかいな」
「それ、俺の愛だから」
「何、言ってんだ…」

力なく閉じられた瞳に続いて、聞こえてくるのは穏やかな寝息。

「やっぱまだ子どもだね…」
腕の中の可愛らしい寝顔を、カカシはいつまでも見つめていたという。





ここまでをして、これが修行ではなく、ただの性行為であるとサスケが知るのはもうちょっと先のお話であった…。










END




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