2004.7.23:Happy Birthday SASUKE




娘。





「ほんとに大丈夫なのかよ…」

不安そう、なんて可愛いものでは決してない、訝しさを前面に宿した冷たい視線を送ってくる人物の。
「心配すんなってばよ、ミソ汁くらいまかせろって!」
毎日毎日無駄としか思えないくらいに、全員サービスで惜しげも無く曝されている鎖骨なんかをチラチラ拝みながら。

「だから向こう座ってろってばよ」
「…わかった」

お、今日は素直じゃん。
やっぱ俺が泊まりに来たことがそうとう嬉しかったのかな。
なんちゃって。

うちわマークが描かれた紺色の背中を見つめていたら、今夜のプランがあれこれ脳味噌に流れ込んできた。
抜かりは許されない。
何しろ、サクラちゃんやいのはともかくとして、あの変態上忍から今日という大切な日を勝ち取ったのだから。
絶対に最高の夜にして、今のところ五分五分状態にあるカカシを一気に追い抜くチャンスなのだ。
とりあえず、今夜は奉仕しまくる方向でいこう。
我儘な姫様の言うことをなるべく聞いてあげて…。
ぐつぐつ煮立ってきたのをぼんやりと確認して、鍋の取っ手をわし掴む。
それから…。



「おい!ナルト!!!」



「え?」
パチン!と音がしたかのように弾かれて、夢うつつの世界から現実に引き戻された。
まではいいが台所の段差を避けるにはもう時すでに遅し。
だってもう身体もミソ汁も、半分以上前のめりになっていて。


「危ね…」
「来んな!!!」
なんとか、かけ寄ってきたサスケを突き飛ばすには間に合った。
もう、それだけできりゃ上等だってばよ。

格好良くそんなことを思ってはみても、両腕に浴びたあまりの熱には耐え切れず、蹲って低い唸り声を上げるしかなかった。










「少しは落ち着いたか」
「………」
はっきり言って、落ち着くどころかギンギンに痛い。
無事だった二の腕をすぐさま掴まれ、出しっぱなしの水道水で暫く冷やした後。
丁寧に患部へと包帯を巻いていきながらサスケが問う。
「だから言ってんだろ。慣れねえことなんかすんじゃねえよ」
「でもよ…」
「黙れ」
まさか、怒ってる?
そりゃそうだよな、折角の誕生日に家は汚されて。
「ごめん」
「あ?」
「ごめん…」
「何謝ってんだ」
「だって、お前の誕生日なのにこんな面倒なことさせちまって…」
「別にこんなことは面倒じゃねえよ。お前が怪我してどうすんだっつーの。暫く使えねえぞこの腫れじゃ」
すぐ様冷やしたお陰で水ぶくれにはならなかったものの、真っ赤に晴れ上がった腕は見ているだけで痛い。
確かに、ナルトの尋常ではない回復力を見てもクナイを握れるまでに2、3日はかかるだろう。
「えーと、あのさ…、俺ってば帰ったほうがいい?」
「何で」
「これじゃさすがに何にもお前にしてやれねえし…」
終わりだ、俺。
俯きながら、モゴモゴ吐き捨てた後、恐る恐るサスケ様を見上げれば。
「添い寝くらいできんだろうがウスラトンカチ」
綺麗なお顔を拝見する暇もなく、唇に噛み付かれていた。



何度か舌を絡ませ合い、溢れ出した唾液を啜りながら。
「サスケ」
「ん」
「大好きだってばよ」
「ふん、うるせえ」
「…人が告白してんのにうるさいはねえだろ」
「てめえの告白なんか聞き飽きてんだよ」
「あーあ、ひでえよなほんっとに」
そんな嘘を吐いたって、艶めかしい白い肌は正直だ。
ちゃんと、背かれた耳の後ろに朱が差している。
きっと無理矢理にでもこちらを向かせれば頬も綺麗な桃色に染まっているに違いない。
ほら。

両手を添えることができないから、サスケの首筋に猫のように擦り寄って。
覗き込んだ表情は想像通りで、キスで潤んだ瞳がまた扇情的だった。


「あ、あのさ〜、お願いがあんだけど」
「あ?」
だいたい予想のつくナルトのお願いは、どうせ碌なことではないだろう。
「これどうにかして」
にっこりと、語尾に可愛らしくハートマークをつけられようとも変わらない。
ふっくらと、足の付け根の真ん中だけ、異様に盛り上がってしまっている。
そこを、何とかしろというのだ。
「お前な…」
「だっていつもみたいに自分で何とかしろってのは無理だってばよ」
目の前に差し出された両腕は言わずもがな腫れ上がっている。
「口も届かないし〜」
そりゃそうだろう、サスケとしても自分のを咥えるナルトの姿なんか見せられるのは願い下げだ。
が、一体誰の誕生日なんだと、ぼやきたくなる気持ちも尤もだろう。

少々乱暴にオレンジ色の着物を引き摺り下ろせば、ウエスト部分に引っ掛かった真っ直ぐに天を仰いだまだまだ小ぶりの生殖器が、ぷるんと弾かれて鼻の頭に軽い挨拶をしていった。
いて!だの、もっと優しく!などと文句を垂れていた口が、この瞬間嬉しそうに曲げられたのがまた腹立たしい。
「てめえ、憶えてろよ」
がぶりと、一気に喉元まで呑み込み、最初っからラストスパートの勢いで吸い上げてやればまだあまり刺激に慣れていないナルトは声も出ないようだ。
じたばたと、両足だけをばたつかせている。
「う、あ、あ!ちょ、ちょっと!ストップストップ!!!」
「何でだよ」
わざと歯を立てながら返してやれば、本当に息が詰まったようで、ヒュッと酸素を呑み込む音だけが聞こえてきた。
その後、簡単に白濁した液体を吐き出したナルトは心なしかぐったりとしていて。
悔しそうに見上げてくる青い瞳を無視して、小さくて低い鼻先をつまんでやった。

「ふが!」
「風呂入んぞ」
後ろ手に親指で、さっさと行けと命令が下される。
ミソ汁臭くてやる気もでねえなんて悪態をつきつつ、サスケ自身もだるそうに立ち上がっているということは。
「マジで?!一緒に入ってくれの?!」
「手、濡らすんじゃねえぞ」
「わかってるって」
早く早く、と肩で背中を押して風呂場へと急かせば、思い切り馬鹿にした視線を送られた。










「あ〜、最っ高…」
「そりゃ良かったな」
俺は両腕を万歳したままの状態で立っているだけ。
ボディーソープをたっぷり馴染ませたやわらかいスポンジを揉みながら、サスケは面倒臭そうに答えてくる。
「ちゃんと腕上げてろよ。濡らしたらマジぶっ殺す」
「はーい」
「よし」
満足げに頷いた後、もこもこと溢れてきた泡を手にとって身体に塗りつけられる。
でもお願いします。
乳から攻めるのはやめて下さい。
上級エステティシャンのような手つきで、ギリギリのところで乳首には触れず、円を描きつつ乳輪をなぞっていく。
そこから脇の下まで滑り込まれれば、乳腺刺激されまくり。
ただでさえ胸はナルトにとって弱い部位なのだから、これだけでもうかくんと腰が落ちてしまいそうだ。
「ふらつくな、洗えねえだろ」
「んなこと言ったってお前…」
おかげさまで必要以上に下半身も反応してしまった。
さっきよりもずっと。
目の前にいるのはこの世で最も愛しい人物。
それも素っ裸。
ぶち込みたくて仕方が無い。
「ゔ〜、ムラムラするってばよ」
「手、下ろすんじゃねえって言ってんだろ!」
抱き締めようと、背中に両手を添えただけで怒られて。
「お前、わかっててやってんだろ…」
「何のことだかな」
ふ、と笑われたのがその証拠だ。
滅多に笑わないくせに、こうやってヒトをいたぶって遊んでいるときにだけ、そんなにも楽しいのかこの極上の微笑を見せてくれる。
「鬼畜。サド。女王様」
「鬼畜はてめえだろうが、この動物」
「動物って…、う、っわ!」
乳首をぐりぐりと押され、よろけた身体に鞭打って、潤滑のままにするりと下ろされた黄金の右手が下半身へと伸ばされた。
そびえ立つモノには一切触れずに、太ももの付け根から陰嚢と肛門の間を力強く揉み解してくる。
「や、やばい…。前立腺が…」
「ほお、良くコトバ知ってんじゃねーか」
どうにも堪らなくなって先っぽだけでもとサスケのものに擦りつけようと試みるも、突き出された腕によってブロックされてしまう。
「サスケ…」
「まだ洗い終わってねえだろ」
息づかい荒く、切実にお願いしてみてもダメなようだ。
しかしもう、限界は当に超えている。
「てゆうか、もう無理」
「おい!」
やっと触れられた陰茎が満遍なく泡でコーティングされたのを確認して、肘から先は使えないまでも二の腕だけで器用にサスケの身体を後ろに向かせて。
腰にまわした両手を引き寄せれば、簡単に尻をこちら側に突き出す形となった。
あとは簡単。
石鹸のぬめりに任せて押し込めばいいだけのこと。
「悪い、指でしてあげられねえけど…」
「そういう問題じゃねえだろ!離せってんだ!」
「いや、それは無理だってばよ」
「何が無理だ!おい!!!」
こうなることは予想していたが、まさか何も解されることなく突っ込まれるとは。
本来入れるのではなく出す器官なだけに、いくらモノが小さかろうと準備が必要というもの。
「待て!俺が自分で何とかするから!ナルト!」
「サスケ…」
「………」
背中越しに見えた、据わりきった青い瞳は水晶玉のようで、情けなくも怯えた表情の自分だけが映し出されている。
そしてこの、うなじにかかる獣のような息づかい。
もう観念することを認めた。



「誕生日おめでとう、サスケ…」
愛してるってばよ、と同時にめりめりと押し入ってくる不躾な肉塊は引き攣れる傷みと共に。
そうなのだ、相手は怪我人。
傷みを遠のかせてくれるはずの愛撫も何もない。
ただただ自分の快楽のままに、無意識に腰を動かしているだけなのだろう。
「マジ殺してえ…」
太ももを伝ってゆく生温かいものがどうか鮮血じゃありませんようにと、淡い願いを抱くサスケであった。





数時間後、ベッドの上では。
腕枕をして満足げに自称恋人の身体を抱きしめながら熟睡しているナルトと。
蹲って断続的に襲われる腸壁の痛みに耐えるサスケの姿があった。










END




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