2003.10.31:Halloween Party
キュラノスウッズ 「ねえサスケくん!今日はハロウィンよ!」 「何だってばよ!それ!」 「うるっさい!あんたに言ったんじゃないっ!」 有無を言わさず顔面を殴られ、「いってー!!!」と、またいつものようにじゃれ合っているナルトとサクラは放っておいて、サスケは暫し思考に入る。 そういえば、幼い頃に一度だけ、ハロウィンの夜、窓の外を垣間見たことがあった。 「早くあたしたちも参加したいわよねー、だいたいハロウィンって、子どもが仮装してお菓子を貰いに行く日でしょ?」 娑婆の読み物にも手を出しているサクラは、隠れ里がかなり浮世とは隔絶された世界であることを十分理解していて。 その他とは異なる文化に多少なりとも興味を持っていた。 そもそも、隠れ里、というものはその名のとおり、秘密が多すぎるのである。 「大人だけ楽しむお祭りじゃないのにー!」 「俺も仮装したいってばよ!!!」 「でしょ?!」 そう、木の葉の里でのハロウィンとは、大人だけの万聖節前夜祭。 子どもが寝静まった頃に始まり、そのまま夜通し行われるのだ。 「出てみるか、俺たちも」 「え?!」 「でも、見つかったらカカシ先生に殺されるってばよ?」 「これも社会勉強だろ」 「じゃあ、変化して大人たちに紛れちゃったらわからないんじゃない?みんな仮装してるわけだし」 「それいいってばよ!俺変化の術得意だし」 「今夜0時、幽霊柳の下で…」 ニヤリと嫌な笑みを浮かべるサスケに続いて、 「「OK!」」 ナルト・サクラも邪悪に微笑む。 こういう悪巧みをするときばかりは、息のぴったり合った第七班の下忍たちであった。 「けどさ〜、仮装っていっても何すればいいんだってばよ?」 何かに変化すればいいことはわかったが、一体何に変化すればいいのかさっぱりわからない。 夜中まで起きていられないナルトにとって、参加者たちを除き見ることは愚か祭の存在自体にもこれまで気付かなかったのだから。 「俺が一度見たときは、魔女とか、黒猫とか、吸血鬼とかだったような気がする」 「そういう系統でいけばいいのか?」 「たぶん」 「へえ〜、何だか楽しみになってきたってばよ!」 「サクラは無理なんじゃないか?」 「ん〜、そうだな、きっと夜中に出て行くなんてサクラちゃんのお母さんも心配するってばよ」 「最悪二人だな」 「うん。でもそれってばちょっとラッキーかも」 「確かに、サクラには(カカシ絡みの)あまり危ないことをさせたくないしな」 いや、そういう意味じゃなくって、俺と二人っきりになれるじゃん!と突っ込もうかと思ったがどうせ鈍いのに何を言っても無駄だろう。 やめた。 「じゃあ、俺が吸血鬼でサスケが看護婦さんってのはどう?」 「待て、何で俺が看護婦なんだ?」 看護婦って悪いものだったのかと、本気で考えてみるが、そういった事例は思い当たらない。 「だって、カップルっぽいほうが紛れるってば」 「じゃあてめえが看護婦やれ」 「俺が女装したらすぐ男だってバレるだろ!」 「お得意の『お色気の術』でも使えばいいだろ!」 「仮装ってのは仮にある姿を装うことで変化で済ますなんて邪道だってばよ!!!」 「?!」 「最後の妥協だ。俺が死神にしといてやるからお前が看護婦やれ。いいな」 「わ、わかった」 フン!と鼻を鳴らすナルトに圧倒されて妥協(誰がどう妥協したのかはいまいち不可解だが)してしまったが、ずいぶんハロウィンにつて詳しいではないか。 出合った頃は可愛らしかったのに、と思い出に浸りたいわけではないけれど。 「俺死神かー。こんな感じでどうだってばよ?」 ボン!と煙が上がり、中から出てきたのは18・19くらいに成長したナルトの姿。 黒いボロボロの布を纏い、大きな首切り鎌を肩に担いでいる。 かなり、いい感じだ。 思わず頬を赤らめるサスケにナルトは目を細めて。 「惚れ直した?」 「な、わけねーだろ…」 「サスケも早く変化してってばよ」 顎を取られ、耳元に直接言葉を吹き込まれる。 「ああ」 …ん?ちょっと、待てよ。 変化? 「この野郎!!!」 大鎌を取り上げ、思い切りその目立つ金髪頭にめり込ませてやった。 「い、痛ってー!!!何すんだってばよ!」 「てめえ変化は邪道だとか抜かしやがって!変化してんじゃねえよ!!!」 「俺の言ったのは性別の話だってばよ!こんな衣装今から作るのも金のねえ俺たちが買うのも無理だろ!!!」 「ナルッ…!」 うるさい口は閉じてしまえという勢いで、唇を塞いでしまう。 まだ舌使いもままならない、稚拙なキスだけれど、いつだってサスケはこれで大人しくなってくれるのだ。 「いいから、サスケも変化するってばよ」 「…わかった」 印を結び、自分の持つ看護婦をイメージしつつ変化してみる。 が、出来上がった姿はナルトにとって納得のいく姿ではないらしい。 「うーん、これじゃハロウィンぽくないってばよ」 もっとこう、包帯とかガーターベルトとか血糊とか…、と注文がかかる。 どうも単語ひとつひとつが某上忍の趣味と被るような気がするが、言われるまま、気にしないよう努めた。 ナース、ガーター、ミニスカート、眼帯、包帯、血糊、白…とイメージを膨らませながら、変化を決めれば、 「サ、サササササスケ!!!」 今度はどうやら完璧だったらしい。 「最高だってばよサスケ!サスケー!!!」 がしっとでかい身体に抱き締められ、つい数年後を思い描いてしまった。 「ずっと一緒にいような、サスケvvv」 「それはいいが、こんなんで外に出るのか?」 「当たり前だってばよ。みんなに自慢するってばよ」 「何言ってんだ、んなことしたらバレんだろうが」 しかし、ここまで女装して女に変化できないというのも何だかおかしな話である。 ま、もういいか。 とにかくハロウィンに参加してみたいのはサスケも同じなのだ。 「楽しみだな」 微笑み、ナルトに視線を合わせればどうも切羽詰ったような表情をしていて。 こんな時の科白など、お見通しである。 「ねえ、あ、あのさ」 擦り寄ってくるナルトを邪険に振り払った。 「お願い!一回だけ、ヤらせて!」 「断る」 「いいだろ一回くらい〜!このカッコのままでさあ!」 「それはコレが上手くいったらだな」 コレ、とナルトの衣装を人差し指で突付いてやる。 「わかったのかよ」 「へーい…」 「返事は『はい』だろ!」 「ああもう!はい!!!」 バシっと引っ叩かれた尻を抑えながら、イイ子にハキハキと返事をするナルトであった。 待ち合わせ時刻まで、あと4時間程。 『ごめんなさいサスケくん!何か今日、うちの親すっごくあたしのこと警戒してて…』 行けそうにないわ…、と半泣きで電話してきたのはサクラ。 やはりな、とナルトも頷く。 「気にするな。どうせあと5年もすれば俺たちだって参加できる」 『そうね。そのときも、一緒に行ってくれる?』 「当たり前だろ」 その言葉に安心したのか、サクラは結果を楽しみにしてると、でも気をつけてと言い残し電話を切った。 「そろそろ行くか」 「おう!」 予想はしていたものの、サクラが来れないのはちょっぴり寂しい気もするが、これでいい。 ―――と。 心から実感できたたのは家を出てすぐのことであった。 「あれ、キバだよな…」 「うん…」 たぶん、こっそり参加していたのを見つかったのだろう。 SM女王風の仮装をした担当上忍である紅とアンコに、変なビキニパンツ一丁に剥かれ首輪で繋がれているのだ。 可哀相に、赤丸ともども四つん這いで歩いている。 「見つかったら、ああなるってことか」 「恥ずかしいってばよ…」 二人の行く先行き先に連れまわされ笑い者にされて。 それでも。 「あのサド女程度だからこんなもんなんだ」 「カカシ先生なんて…」 約0.2秒くらい考察して、二人は一つの結論を出した。 「もうハロウィンは十分だってばよ。みんな仮装してて楽しかった」 「そうだな。たいしたことないな」 これなら二人で仮装して、家で遊んでいたほうがいい。 そう思った。 途端に。 二人の両肩に、ずしりと圧しかかる嫌な重量感。 「ねえ…、ナニやってんの?そこのおにーさんとおねーさん」 怒りのためか、肩に食い込む指先に力が込められる。 「ど、どちらさま?ひ、ひとちがいだってば、ですよ」 「アホかてめえ!」 「ぐえ!」 横から鳩尾を力まかせに殴られ、一瞬呼吸を止められた。 そんなナルトを放り出し、薄情なサスケは死ぬ気で自宅めがけて駆け出す。 「あっ!裏切り者!!!」 「ま、そう焦んなって」 追いかけようとするナルトの首根っこをわし掴み、追跡を阻止すれば。 すぐに暗闇の中からサスケを担ぎ上げた、髑髏が素敵なSSの衣装を身に纏ったアスマが姿を現して。 カカシめがけて投げられたその身体を片手でキャッチする。 「俺らから逃げようなんざ15年は早いわなあ」 「で、何やってんのかな?ナルトくん、サスケくん?」 「う…」 「それにサスケ、俺が買ってきたナースとかセーラーとかは着てくれないくせにナルトに言われればそうやって着んのね」 「これは!ハロウィンだからだろ!」 「あっそ」 小脇に抱えられ、太ももに軽く食い込んでいるガーターベルトを口に挟まれ歯で下ろされそうになった。 反射的にサスケが変化を解けば、ナルトも慌てて同じく元に戻る。 「ま、お前たちはまだそのままでいいよ」 「ところで…、何でうちのハロウィンが18禁の祭りだか考えたことあるか?」 屈んだアスマと同じ視線になり、ぐしゃりと金髪を掴まれた。 そういえば、何でなんだろう。 露出が激しいのかとも思ったが、激しいのもそれなりにあることはあったものの子どもを遮断するほどでもない。 「今夜だけは祭の参加者全員、誰が誰を食ってもいいんだよ」 「「…は?」」 「仮装は、一夜限りのセックスを後腐れ無くするって意味なんだろうな」 「誰だと気づいても気づかないフリしてね」 へえ〜、と、素で納得してしまう。 道理で、サスケが外を覗いていた頃、サクラの家も然り、両親が参加していなかったわけだ。 倫理に外れた祭りを催している割には、家族の情が深いのも木の葉隠れの特徴なのである。 「紅も今ごろハラワタ煮え繰り返ってるぜ、コブ付きじゃ引っかけらんねえもんな」 「キバも死ぬな、明日」 童貞食いまくり!ってはりきってたもんな、と二人は大爆笑で。 一緒に、ナルトとサスケも笑ってみた。 「じゃー俺たちもいただくとしますか」 「そうねー」 サスケじゃあんま変わり映えしないけど、と頬に唇を寄せてくるカカシの頭を叩く。 「じゃあ今後一切俺とやんじゃねえよ!」 「誰も嫌だなんて言ってないでしょ」 「ナルト、お前もサスケをカカシ並に満足させてやりたいと思うだろ?」 「うん!思うってばよ!!!」 「じゃあ俺が一晩中実践に付き合ってやるよ」 「へ…?」 「ごめんねー、アスマ。うちのが迷惑かけちゃって」 アスマの肩に手をかけ、同じくSSの仮装をしたカカシがナルトを楽しそうに見つめて。 「別に。ただしさっきの変化でいろよ」 「な、何で…」 嫌な、予感がする。 「アスマのじゃお前、そのままだったら二つに裂けてるよ」 カカシの背中で、サスケがビクリと怯える様子が目に映った。 「や、やだな。大袈裟だってばよカカシ先生」 むしろ実践で教えてくなくても口答でいいってばよ、とナルトは引き攣った笑顔で小さく抗議する。 「俺らも誰かひっかけて帰るつもりだったんだよなあ」 「でも規則違反の生徒見つけちゃったら教師として放って置けないし」 「いや、もう俺たちは反省した。すぐ家に帰るから…」 「そうもいかないよ、悪い子には罰は与えないとーvvv」 「なあ」 その、教師を強調するならば、その罰の内容も教師らしいものにして欲しいものだ。 「じゃ、帰って犯るか」 「そうね」 「「や、やめ!」」 有無を言わさずボン!と四人共々姿を消し。 移動した場所はどこかのホテルの一室だろうか。 髑髏の眼帯に見下ろされ。 無駄に大きなベッドの上で、先ほどの姿に変化させられるナルトとサスケであった。 後日、サクラに何と報告したかは不明である…。 END |
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